やまぐち農園において、『野菜』を栽培する上で最も重要な要素は、「土作りから」と考えています。

手作りの堆肥

やまぐち牧場と共同で作ったこだわりの堆肥を使用しています。

開拓当初、この地域の土のほとんどは草津白根山の火山培土でした。酸性がやや強く、また、肥料養分の少ない痩せた土壌でした。野菜の栽培に適した肥沃な土にするため、落ち葉を集めては発酵させて腐葉土にしたり、ヤギを飼うなどして有機質肥料の投入を行ってきました。

私の父の代(1955年初期)になって、乳牛(ジャージー種、現在はホルスタイン種)を飼い始め、大量にでる家畜の堆肥(牛糞)を毎年畑に投入し続けることで、年を重ねるごとに肥沃な土になってきました。

現在も兄が酪農(やまぐち牧場)を営んで、約60頭(2020年8月現在)の乳牛を育てています。この資源を生かし、自前の堆肥施設で時間をかけて発酵・熟成させた「完熟堆肥」を作付けの前に散布しています。

完熟堆肥の効果

完熟堆肥の効果は、簡単に言えば、野菜がもつ生命力を底上げしてくれる土になるということです。

まず、完熟堆肥の使用によって、固まりにくく柔らかいふかふかの土になります。ふかふかの土は、より多くの酸素を含み、また、水が通りやすくなるため、野菜が根を張りやすい土壌環境にしています。その上、大きく張った根から、野菜が土の養分をたっぷりと吸い上げてくれます。こうして、野菜に備わる病害虫への抵抗力や、野菜の美味しさを最大に引き出すことができるのです。

とりわけ完熟堆肥の効果が高いのは、豆類、葉物野菜です。抵抗力という面では、葉物野菜の腐れを防止してくれる効果が目に見えて現れます。また、味の面でも、えぐみの少なく味が良い野菜にしてくれます。特に、とうもろこしに関しては、完熟堆肥の使用によって、甘みに差がでるので、完熟堆肥を効果的に活用することが欠かせません。葉物野菜やとうもろこしの甘みを決める大きな要素の一つは、高冷地による日中・夜間の寒暖差ですが、完熟堆肥ももう一つの大きな要素になっています。ぜひ旬の時期のやまぐち農園の野菜と、これらの要素を取り入れていない産地の野菜を食べ比べてみてください。

完熟堆肥の作り方

① 集めた牛糞の水分を飛ばす。
② 細かくした樹皮などが入ったバーク材と混ぜ発酵させる。
③ 定期的に堆肥をかき混ぜて空気を取り込み、さらに発酵を促す。

②・③で発酵が進む過程では、約70℃~80℃の温度まで堆肥の温度が上がります。写真は、重機で堆肥をかき混ぜて空気を取り込むための作業をしている風景です。この日は、真夏の8月11日・お昼頃、気温約28℃の環境下でしたが、水蒸気が真っ白く上がってきます。

この発酵までのプロセスを約半年~1年半かけて行い、完熟化した堆肥を作ります。数か月から半年程度で完熟堆肥を作る場合も多いようですが、じっくりと時間をかけて発酵させた堆肥の方が、土の中の有機質が細かく分解されて、野菜もより吸収しやすくなります。やまぐち農園では、発酵の状態も確認しながら、半年から1年半という長い期間をかけて完熟堆肥を作っています。

[Colum]
家畜堆肥には、主に牛糞・鶏糞・豚糞の三種類の家畜堆肥がありますが、畑の土作りに最適なものは牛糞堆肥と考えています。牛糞堆肥は持続性が高く、栽培している豆類にも適している成分であることから、当農園では牛糞堆肥を使用しています。牛糞堆肥を基礎にして、不足する要素について補います。まず、全般的にph補正を目的に苦土(くど)石灰が必要です。(*1)、葉物野菜には土壌病を防ぐために有機石灰(*2)(土壌病回避のため)、2、3年に一度の熔燐(ようりん)(*3)の散布(火山培土)も欠かせません。これらは、いずれも有機JAS規格での野菜栽培でも使用が認められているものです。
また、牛糞堆肥では、植物を育てる重要な要素である窒素分などがどうしても不足します。これを補充する部分にのみ、化成肥料を使用しています。
【用語解説】
(*1)苦土石灰:酸性雨の影響等で、日本の土は酸性に傾きつつあります。しかし、多くの植物は中性から弱アルカリ性の土を好む傾向にあります。これをアルカリ性に近づける役目を果たすのが苦土石灰です。主成分は、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムです。
(*2)有機石灰:牡蠣殻や貝殻を焼いて粉砕したものです。苦土石灰と同様、酸度調整資材として使われます。
(*3)熔燐:リン酸と鉱石などの天然の原料から作られた有機JAS認定肥料です。リン酸は、肥料の三要素と呼ばれるものの一つで、使用することで実物(豆類など実のつく)野菜や果物の実付きを良くしたり、土壌の地力を高めてくれる効果があります。
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